事務作業を効率化すべき3つの理由と6つのコツ

2021/06/22 0:00:00 | 台帳管理 事務作業を効率化すべき3つの理由と6つのコツ

どの職場でも必ずあるのが経費申請や押印、数字の取りまとめなどのような事務作業です。 社員や取引先とのお金についてのやり取りといった、ミスの許されない作業で神経をすり減らしてしまう人も多いのではないでしょうか。今回はこの事務作業について、効率化がなぜ必要なのか?効率化に取り組みコツについてお伝えしていきます。

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どのような職場でも必ずあるのが、経費申請や押印、様々な数字の取りまとめなどのような事務作業です。
淡々と作業をこなしていくことが退屈と感じる人もいる一方で、社員や取引先とのお金についてのやり取りのようなミスの許されない作業で、 神経をすり減らしてしまう人も多いのではないでしょうか。

今回はこの事務作業について、効率化がなぜ必要なのか?効率化に取り組みコツや、業務効率化の事例の調べ方についてお伝えしていきます。

なぜ事務作業の改善が必要なのか?

売上に直接結びつかない業務でも『利益』を生み出せる!

事務作業そのものは売上に直接結びつく業務ではありません。 例えば、売上を上げるために顧客先に移動する際、車や電車での移動にかかった費用を交通費申請するといった事務作業があります。 交通費の申請の件数や、それにかける時間と売上が比例することはありませんよね?

つまり、交通費申請を行う時間そのものは、ゼロに近ければ近いほど望ましいということになります。 そうして効率化されると、売上が上がるのではなく、下の画像のように『利益』が残るということになります。

 

交通費申請をしている時間も当然人件費はかかります。

効率化によって申請する時間が少なくなると、同じ売上を上げるために必要な時間が短縮され、少ない人件費で同じ売上を上げられるようになります。
原料費やその他の経費を削減することなく、『利益』が残ります。

この利益が残るということがポイントです。 例えば製造業の場合、粗利率の平均は50%と言われています。粗利率は売上の内、何%が自社にとっての利益(儲け)になったか、という数字です。 粗利率50%の製造業が1000万円の売上を上げた場合、その利益(儲け)は 1000万円の 50% なので 500万円 が利益になります。 仮に、事務作業の効率化によって、月に5万円(年間に60万円)を削減できた場合、120万円の売上があったことと同じくらいの影響があると言えます。

また、交通費申請などの申請業務は、電子化することによってペーパーレスにしたり、申請者だけでなく上長の承認作業や、 会計システムへの入力作業などの時間を削減できる可能性があるため、その削減効果は想像以上になります。

以下のパターンを考えてみましょう。

■改善前

営業担当 3人(時給 2000円 換算)
上長 1人(時給 2500円 換算)
経理担当 1人(時給 1800円 換算)
月の交通費申請 5件/1営業担当
申請書作成 10分/1件
申請書確認、押印 5分/1件
会計システムへの入力 3分/1件
  • 交通費申請作成にかかる費用(3人分)

    • 10分 x5件 x3人= 150分 = 5,000円/月 + 印刷代@10 x 15件 = 5,150円
  • 申請書の確認、押印にかかる費用

    • 5分 x 15件 = 75分 = 3,125円/月
  • 会計システムへの入力にかかる費用

    • 45分 = 1,350円/月
  • 交通費申請の業務全体にかかる費用: 5,150円 + 3,125円 + 1,350円 = 9,625円/月 → 115,500円/年

■改善後(ペーパーレス、電子申請、会計システムとの連携)

営業担当 3人(時給 2000円 換算)
上長 1人(時給 2500円 換算)
経理担当 1人(時給 1800円 換算)
月の交通費申請 5件/1営業担当
申請書作成 5分/1件
申請書確認、押印 3分/1件
会計システムへの入力 0分/1件
  • 交通費申請にかかる費用(3人分)

    • 5分 x5件 x3人 = 75分 = 2,500円/月
  • 申請書の確認、押印にかかる費用

    • 3分 x15件 = 45分 = 1,875円/月
  • 会計システムへの入力にかかる費用

    • 0円
  • 交通費申請の業務全体にかかる費用: 2,500円 + 1,875円 = 4,375円/月 → 52,500円/年

  • 額: 115,500円 - 52,500円 = 63,000円/年

こうして考えると結構な金額になりますね。粗利率50%で考えると 12万円以上の売上 と同じ効果になります。そして、一度この仕組みにしてしまえば、63,000円の利益が常に上がる状態になっていると言えます。

業務をシンプルにして従業員満足度を上げられる!

とても手間がかかる作業よりも、簡単な作業の方がその業務をする人からすると喜ばれます。 作業の手間も、作業を行う頻度も減らすことができれば、その事務作業を行うことに対してのストレスを大きく減らすことに繋がります。
また、お金を扱う業務の場合、計算ミスや入力間違いがないことが求められますので、こうした業務に対するプレッシャーやストレスは、仕事のやりがいや従業員満足度に大きく関わってきます

例えば、本社と支社のその日の売上を1円単位で確認する作業を4人で電卓を使って行い、全員の金額が一致するまで帰れない。
といった業務を行っている会社があるとしたらどうでしょうか? プレッシャーもあると思いますし、こうした業務を絶対に変えない!という姿勢だったとすると、社員の定着にも影響が出てくるのではないでしょうか。

単純に『今ある業務を止める』ということではなく、どのように効率化できるか、どう置き換えられるか、という点で考える必要があります。

ルーチンワークの多い業務だから効率化できる!

事務作業の多くはルーチンワークです。決まりきった手順でこなすことが多いので、パターン化しやすい特徴があります。
例えば、顧客の要望を聞いて設計図に起こすことをパターン化するのはなかなか難しいです。要望や好みは顧客それぞれですし、設計図に起こすときも間取りも違えば、予算も違います。部分的に効率化できることはありますが(CADで製図する、など)業務の一連の流れを通して効率化するのは難しいものがあります。

一方で、交通費申請のような業務は手順が決まっていますし、申請の内容も決まっています。

行き先と到着、金額が違うくらいです。こうした業務はパターン化しやすいので、一連の業務の流れを手順化するとムダな作業がないかが見えやすくなり、効率化の緒(いとぐち)が見えてきます。そのため、顧客ごとに要望を聞いてオーダーメイドでサービスを提供するような業種では、こうしたルーチンワークをパターン化し、効率化によって利益を上げていくことも重要になってきます。

効率化のコツ

事務作業を改善して効率化していこうと思っても、どこから手を付けたらいいかわからなくなるものです。ここからは効率化のコツをいくつかご紹介します。

手順書を作る

まずはじめに業務の手順書を作ります。手順書を作ることによって業務の流れを見えるようにします。 こちらの記事でもご紹介していますが、業務の一連の流れを書き出すことから始めます。

業務の効率化と成果に結びつく進め方

ここでのコツは、箇条書きで書く、インプットとアウトプットを書くということです。 手順を文章にすると作業がわかりにくくなります。例えば同じ作業でも次のような書き方だとすごくわかりにくいと思います。

  • Before

共有フォルダ〇〇にあるExcelの「交通費申請.xlsx」をPCにコピーし、ファイル名を「交通費申請_申請年月日_社員番号_名前.xlsx」に変更します。顧客名、行き先、目的、経路、金額、承認者を入力し、上長にメールで申請します。

  • After
  1. 共有フォルダ〇〇にアクセスします。
  2. Excel ファイル 「交通費申請.xlsx」をPCにコピーします。
  3. ファイル名を以下に変更します。
    • 交通費申請_申請年月日_社員番号_名前.xlsx
  4. 次の項目を入力します。
    • 顧客名
    • 行き先
    • 目的
    • 経路
    • 金額
    • 承認者
  5. 「交通費申請_申請年月日_社員番号_名前.xlsx」をメールに添付して上長に申請します。

After の方がスッキリしていて、何をするのかわかりやすくなっています。

手順の流れがわかりやすいので無駄になっている手順にも気づくことができますし、手順を改善する際にも変更しやすい、という利点があります。

手順を改善していく

手順書を作って終わりではありません。 同じ業務でも人それぞれが違うやり方でやっていては手戻りが起こりやすくなったりするので、手順書の手順で業務してもらうように統一します。 統一した手順で業務を行うと、複数人でその手順で業務を行うことになるので、例外パターンが見つかったり、手順の抜け漏れが見つかったりします。そこから手順を改善したり、ムダがないかを探すことでより良い業務に磨き上げることができます。

ここでポイントなのは『簡単に手順は増えるが、簡単には減らない』ということです。

この Excel シートに記入したら別の人にチェックしてもらうとか、この台帳に変更点を記入する、チェックシートを用意しチェックをする、といったように作業は簡単に増えます。そして一度増えてしまった作業手順はなかなか減らすことはできません。

一度始めたことを止めるということに抵抗が生まれるからです。

特に、別の資料やシステムに転記するという業務の場合、チェック作業や管理台帳への追記などが発生しやすく、時間も工程も簡単に肥大化します。 そのため、手間をできるだけ増やさずに、作業の精度や品質をどのようにして上げていくか、十分に検討することをおすすめします。

その手順を追加することで精度や品質を上げることができ、かつ今やっている何らかの作業を止めることができればベストです。

手順書や管理台帳をコピーしない

いつも使う手順書や情報が管理されている台帳などを、自分のPCに置いておきたいということはよくありますが、これはおすすめしません。 なぜなら、手順書や台帳がコピーされたとたんに、どれが最新のものなのかわかりにくくなってしまうからです。

最新の情報を探したり、整合性を取ったり、間違った情報で作業を進めてしまったために手戻りになってしまう事が起こりえます。 そして、仮に台帳の中に間違った情報が紛れ込んでいると、途端に台帳の信頼性が損なわれ、その情報が間違っていないかチェックする、といった確認作業にもなりがちです。

また、せっかく統一した手順を作っても、その人その人のオリジナルの手順が生まれやすくもなります。 基本的には関係者全員がアクセスできるどこか共通の場所に、手順書や管理台帳などを保存しておき、自分のPCにコピーする場合には変更禁止にすると言った対策が有効です。

改善作業の時間を予め確保する

ここまで書いたコツを見ると時間が結構掛かりそうということが思われるのではないでしょうか。そうなんです、業務改善はすぐには結果が出ませんし、長続きしないことが多いです。ダイエットに似ているかもしれません。

スキマ時間でコツコツ改善する、といった方法だと改善作業が後回しになりがちで、中々成果が出ません。そのため、いつの間にか改善作業が行われなくなります。 事務作業の業務改善を始めることはたしかに大事ですが、もっと大事なのは継続することです。そのため、継続しやすい環境づくりが重要です。 例えば、毎月第2、第4月曜日の14時〜16時は改善作業の時間にする。といったように、予め時間を確保しておくことはとても効果があります。

専門家の意見を仰ぐ

第三者の視点から今の業務を俯瞰してみることも重要です。今の業務を長年続けていると、社内の常識や慣習に染まってしまっていて、社内からは効率が悪いことや、無駄な作業などが見えにくくなります。

商工会議所や全国のよろず支援拠点などでは専門家派遣を行っています。

 

ちなみに私も IT に関する専門家として登録していますので、秋田県内の中小企業さんにお伺いして、業務のお悩みや IT に関するお悩みについて相談できます。 こうした相談はすべて無料なので、外部からの意見がほしい、というときにはとても使い勝手の良い制度だと思います。

事例を調べる

他社の事例を調べることもとても有効です。

他社の改善事例を知ることで、自社でも同じような問題が起きていないかを振り返ることができますし、どういった方法で解決できたか、取り組みの際にどんな壁があったか、など業務改善を進めるノウハウも知ることができます。

事例を調べるのに役立つサイトをいくつかご紹介します。

compass

 

compassは中小企業での IT 活用の情報がまとめられたサイトです。様々な業種、職種での課題や、それをどのように解決したか、どんな IT ツールを活用したかなどが紹介されています。

 

似たような業種や、今抱えている課題などで記事を探すことができるので、業務改善のヒントを知ることができます。

kintone の事例

 

kintone はサイボウズ社が提供している、マウス操作で業務システムが開発できる、業務改善プラットフォームです。 IT 企業でなくても業務システムが構築できる、という特徴から非ITのユーザー企業での導入事例や活用事例が豊富に掲載されています。

 

kintone も業種や会社規模問わず、様々な業務で活用されている実績も十分にあるツールですので、同じ課題を抱えている企業がどのように改善できたかなどを知ることができます。

SlideShare

 

 

SlideShare(スライドシェア)はその名の通り、プレゼン資料の共有サイトです。様々な企業が行ったプレゼンの資料がアップロードされており、自由に見ることができます。海外のサイトですが、日本語のプレゼン資料も数多くアップロードされており、『業務改善』のキーワードで検索すると1000件以上がヒットします。

まとめ

今回は事務作業の業務改善についてお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか。 どこから手を付けていいかわからないということはよくあると思いますが、まずは改善のための時間を確保し、業務の手順を作るだけでも見えてくるものがあります。

Written By: 合同会社 Linkup