先日、IT専門の調査会社であるIDC Japanが、日本国内のクラウド市場についての予測を発表しました。
これによると、クラウドサービスの利用はこれまで以上に普及が進むとされており、その背後には、これまでクラウドが活用されてこなかった領域でのクラウドの採用や、企業のDX推進など、様々な要素が絡み合っています。
そこで今回の記事では、このIDC Japanの発表内容を踏まえ、これからのクラウド利用の動向と、なぜ多くの企業がクラウドへとシフトしていくのかという問いについて考察してみたいと思います。
特にクラウドのメリットに焦点を当て、企業がクラウドを活用することでどのような利益を得られるのか、また、どのような課題が克服できるのかについて深掘りしていきます。
これからクラウドを導入しようと考えている企業の方々にとっては、具体的なメリットとともに、クラウド導入の判断材料を提供できればと思います。
IDC の調査によると日本のクラウド市場は、2022年には前年比37.8%増の5兆8,142億円(売上額ベース)に達すると予測されています。さらに、2027年にはその市場規模は2022年比約2.3倍の13兆2,571億円に成長すると予想されています。
ここまでの成長を支えた一番の要因は、従来型ITからクラウドへの移行が進んだことにあります。クラウドが Web サービス開発、業務システム、基幹システムまで幅広く活用されていることが成長を支えています。
近年は DX(デジタル・トランスフォーメーション)への企業の関心が高い状況が続き、DX を実践する環境としてのクラウドの重要性は高まっています。しかし、DX を実践するとした場合、人材の確保や企業、組織の変革などがハードルとなりその勢いは2024年に一段落を迎えると述べられています。
こうした要因から、DX でのクラウドの利用から、IT や業務の効率化のためのクラウド利用に移行しつつあります。
業務の効率化や社内の IT システムとしてクラウドを選択した場合、どのようなメリットがあるのか整理してみました。
クラウドの大きなメリットとして、初期投資の低さが挙げられます。
AWS(Amazon Web Services)などの主要なクラウドサービスプロバイダーは、ユーザーが必要とするリソースを迅速に調達し、展開する能力を提供しています。
具体的には、AWSのアカウントを作成し、いくつかのクリック操作を行うだけで、様々なアプリケーションを稼働させることが可能です。また、必要な数のサーバーを手間なく調達することもできます。
これは特に、急速にビジネスを拡大したいスタートアップや、プロジェクトベースでリソースを調整したい企業にとって、大きな利点となっています。
さらに、AWSなどのクラウドサービスは、利用した時間や確保したリソースに対してのみ料金を請求する従量課金制を採用しています。これにより、ユーザーは必要なときだけリソースを使用し、不要になったらサーバーを削除または停止することで、費用を抑えることが可能です。
これは、従来のオンプレミスシステムとは大きく異なります。オンプレミスシステムでは、必要なハードウェアやソフトウェアを事前に購入し、設置、管理、保守といった手間とコストが発生します。また、機器を発注してからアプリケーションが稼働し始めるまで数ヶ月を要することもあります。
ビジネスの拡大や急激なリソース不足に、オンプレミスでは対応しきれない事が多いです。クラウドサービスを利用することで、これらの初期投資と運用コスト、そしてアプリケーションが稼働するまでの時間を大幅に削減することが可能となります。
これが、多くの企業がクラウドサービスを選択する大きな理由となっています。
クラウドの大きな利点の一つとして、開発者や企業が新しいアプリケーションやサービスを容易に試すことができる「トライ・アンド・エラー」の環境を容易に提供できる点があります。
これは、クラウドサービスが最小のリソースから始めて、状況に応じて規模を拡張または縮小する柔軟性を持っているからです。
例えば、新しいアイデアをテストしたい開発者は、クラウド上でリソースを短時間で確保し、アプリケーションやサービスのプロトタイプを作成、テストすることが可能です。そして、これらの試行を通じて得られたフィードバックやデータを基に、アプリケーションやサービスの改良や修正を迅速に行うことができます。
このような短期間での改善は、従来の開発環境よりも低コストで行うことができるため、企業にとってはリスクを最小化しながら新たなイノベーションを追求する上で非常に有益です。もし初回の試行がうまくいかなかった場合でも、その失敗から学びを得て、次の試行に活かすことが可能です。
また、先に述べた通り、クラウドサービスではリソースの使用量に基づいて費用が発生する従量課金制を取っていることが多いため、試行が失敗しても大きな金銭的損失を出すことなく、修正や変更を行うことができます。
これにより、開発者や企業はより大胆な試行錯誤を行うことができ、革新的なアイデアやサービスを生み出す可能性が高まります。
『2. トライ・アンド・エラーが容易』での内容とも重複しますが、クラウドの大きなメリットとして、その柔軟性と拡張性が挙げられます。
利用者はビジネスの需要に合わせて簡単にリソースを追加したり、必要なくなったときにはすぐに削減することが可能です。
従来のオンプレミス環境では、リソースの追加や削減には物理的な設備の追加や廃棄が必要であり、時間もコストもかかる上に、事前の予測が難しく、リソースが過剰になったり不足することもありました。しかし、クラウドでは先に述べた通り、数クリックの操作で瞬時にリソースを拡張したり縮小させることが可能です。
また、季節性やキャンペーンなど一時的な需要の増加にも素早く対応することができます。例えば、年末年始や特定のセール期間など、一時的にサーバー負荷が増える時期でも、クラウドサービスを利用すれば必要なだけリソースを増やし、需要が落ちたらリソースを減らすことが可能です。
これにより、ビジネスが拡大するにつれて必要なリソースが増えても、またビジネスが縮小するときに無駄なリソースが発生しても心配することなく、
その時々のビジネスの状況に最適な環境を保つことが可能になります。これらの要素は、ビジネスの成長にとって非常に重要で、クラウドが提供する柔軟性と拡張性はこれらを実現する上での大きな力となります。
クラウドの活用は今後もさらに活発になることが予測され、その活用の範囲はこれまでよりも多様になるでしょう。
IDC Japanの予測によれば、クラウド市場はさらなる成長を遂げるとされています。この成長を見据え、企業はクラウドのメリットを最大限に活かすための戦略を検討し、クラウドの導入を検討することが重要です。クラウドを活用することで、企業は競争力の向上や革新的なビジネスモデルの実現に向けた一歩を踏み出すことができるでしょう。
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