今年(2023年)の10月に、Windows Server 2012、Windows Server 2012 R2 のサポート期限が切れることについてご紹介しました。
Windows Server 2012 のサポート終了とクラウドの活用
この記事では NAS や社内システムを動作させているサーバー OS として、現在広く利用されている Windows Server 2012 と、セキュリティと機能をアップデートした Windows Server 2012 R2 がサポート期限が切れることによるリスクについて解説しています。
OS の他にもデータベースとして利用している SQL Server や、プログラミング言語などもサポート期限が設定されています。何年も前に構築したシステムが稼働しているものの、運用保守ができず、古いバージョンのまま現在も使用しているケースはとても多いです。
利用できているのだから問題ないのでは?と思われる方もいるのではないでしょうか。
今回はいわゆるレガシーなシステムを利用し続けることのデメリットと、移行の選択肢、移行時に考慮しておくことを解説します。
目次
レガシーシステムとは?
レガシーという英単語は遺産や資産という意味合いで使用されますが、レガシーシステムという言葉としてはネガティブな意味合いで使用されます。
レガシーシステムという用語自体には明確な定義はありませんが、一般的には過去の技術を使用しているシステムや、サポート期限が切れた OS やサーバー、プログラミング言語、データベースなどを使用しており、開発や運用、保守に多くの制約やコストを抱えたシステムのことを指すことが多いです。
何年も前に構築した業務システムを今も当時のまま使用し続けていたり、サーバーを買い替えているものの、システムの中身はそのまま、というケースも多いのではないでしょうか。
レガシーシステムを利用し続けることのデメリット
OS やデータベースのサポート期限が切れることによるデメリットは、Windows Server 2012 のサポート終了とクラウドの活用 などでもご紹介しましたが、それ以外にはどのようなデメリットがあるのかご紹介します。
1. ハードウェアの調達が難しくなる
オンプレミスでシステムを動作させている場合、サーバーやネットワーク機器、NAS などのハードウェアを使用しています。例えば古いサーバーを使用してシステムを動作させている場合、そのサーバーに対応するハードディスクやメモリなどの交換部品の調達が難しくなります。
何年も前に交換対応が終了していたり、ハードウェアの在庫がなくなっていることも珍しくありません。
例えば、ハードディスクを冗長化するための RAID(レイド)という仕組みでは、複数のハードディスクを使用してデータを分散して保存することで、ハードディスクが故障した場合でもデータが失われることを回避しています。
この RAID を構成するためには、同じ容量のハードディスクで構成する必要があります。
回転数や製造メーカー、細かな性能も合わせることが推奨されます。何年も前に構築した RAID でハードディスクが故障し交換対応が必要になった際に、すでにハードディスクの在庫がないために、データを失うリスクを抱えたままシステムを稼働させないといけなくなった、という事も起こりえます。
ハードディスクだけでなく、システムを動作させているサーバーに搭載している様々なハードウェアが故障した際に、交換する部品がないと言ったこともありうるので、何年も同じ機器を使用し続けることはリスクが徐々に大きくなります。
2. 開発環境が提供されない
古いプログラミング言語で開発されたシステムを使い続けることもリスクになります。
例えば、Microsoft が提供していた Visual Basic 6(VB6)というプログラミング言語は1990年代から2000年代の初めにかけて、多くの業務システムの開発に使用されました。現在も多くの業務システムが VB6 で動作していると言われます。
この VB6 は 2008年4月に Microsoft の延長サポートが終了しており、それと同時に VB6 を開発するための環境のサポートも終了しました。その後にリリースされた Windows 7 や Windows 10 での開発環境の動作自体がサポートされなくなっています。
これにより、次のような課題が浮上します。
- セキュリティの脆弱性
サポートが終了したプログラミング言語は、セキュリティの更新が停止します。これにより、新たな脅威に対して無防備になり、企業の重要なデータが危険に晒される可能性があります。 - 機能の制限
新しい技術やサービスとの連携が困難になります。市場の変化に対応するためのシステムのアップデートができないため、競争力の低下につながることがあります - コストの増加
古いシステムを維持するためのコストが増加します。専門的なスキルを持つ人材の確保や、旧バージョンのハードウェア・ソフトウェアの維持には、高い費用がかかることが一般的です。 - 開発、修正ができない
システムの不具合などの修正を行う際も、開発環境が用意できないために、プログラムの修正ができません。
3. 現行を踏襲した移行ができない
上述のとおり、古いプログラミング言語を使用しているがために、システムを動作させる環境や開発するための環境が提供されていない、といったことが起こり得ます。
新しい環境を用意し、システムを移行しようと思った場合でも、新環境でシステムが動作しないことがあります。これは、以下のような要因に起因することが多いです。
- 互換性の問題
古いプログラミング言語やライブラリが新しいオペレーティングシステムやハードウェアと互換性がない場合、システムの移行は非常に困難になります。 - ドキュメントの不足
システムが開発された当時のドキュメントが不足していると、どのように動作するのか、どの部分を変更すればよいのかが不明確になり、移行作業が遅延することがあります。 - 専門スキルの不足
古いプログラミング言語に精通した開発者が少なくなると、システムの解析や移行作業が困難になります。このため、移行プロジェクトのコストが予想以上に高くなることもあります。
脱レガシーシステムで考慮したいこと
1. システムの現状と問題点を把握する
まず初めに取り組みたいことは、社内で使用しているシステムを把握し、どのサーバーで動作し、OS やプログラミング言語に何を使っているか、何年使用しているか、サポートの状況などを把握することが必要です。
システムの移行は綿密に計画を立て、長期的に取り組んでいく必要があります。
そのため、予めどのようなシステムがどういった環境で動作しているかを洗い出し、今後数年の移行計画を立てることが必要になってきます。
2. クラウドの活用を考える
新環境を構築するために、オンプレミスに新たに環境を構築することも検討できますが、ここはぜひクラウドの活用を検討することをおすすめします。
クラウドを活用することで、サーバーの調達にかかる費用や時間を大幅に縮小でき、変化に柔軟に対応できます。オンプレミスの場合、必要なハードウェアを調達するために、予めシステムが十分動作するために必要な性能を見積もります。その後、発注しても実際に納品され、システムが稼働するまでは半年から1年近くかかることも珍しくありません。
クラウドの場合は、使用するサーバーやデータベースの性能や調達する台数は柔軟に変更することができ、管理画面から数クリックするだけで利用可能な状態となります。
3. コストの構造の違いを知る
AWS などの主要なクラウドのサービスでは、初期費が発生せず使用量に応じた従量課金やプランに応じた月額課金の仕組みを採用しているサービスが多いです。
システムの利用状況や会社の規模に合わせて、使用するサーバー台数や性能を柔軟に変更できるので、性能を無駄なく利用することができます。
例えば、プロモーションやセール時など、一時的にアクセスが増える期間にはリソースを増やし、通常時にはリソースを減らすことで、最適なコストでの運用が可能です。
また、社内システムのように、顧客に提供するシステムでなくとも、企業の成長に合わせて、必要なリソースを追加することが容易なので、急なビジネスの拡大にも迅速に対応することができます。
クラウドの注意点
クラウドは活用できれば非常に便利なサービスですが、注意しなければいけない点もあります。
責任の範囲
AWS や Microsoft Azure といったクラウドのインフラサービスを利用する場合、AWS や Microsoft はサーバーやネットワーク、ストレージなどのインフラストラクチャを保護する責任があります。
しかし、データを暗号化したり、不正アクセスやセキュリティ攻撃を防御すると言った責任は利用者側にあります。
AWS や Azure ではセキュリティ機能を多数提供していますが、その効果を最大限に引き出すためには、ユーザー側で適切に設定し利用する必要があります。
まとめ
レガシーシステムを使い続けることのデメリットや、レガシーシステムから脱却する際ののポイントについて解説してきました。クラウドの利用は大きなメリットをもたらしますが、その分専門的な知識が必要とされ、移行についても綿密な計画が必要になります。
弊社ではクラウドでのシステム構築からセキュリティの設定、運用・保守の代行まで承っています。クラウドのメリットを活かした環境の構築やセキュリティの設定まで一貫して行っており、現在のシステムを利用し続けることについての心配事などの相談にも無料で対応しています。
ぜひこちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。